「やはり行ってしまうのか。」

    メタナイトはそう言って僕の手を握ってきた。数えられるくらいしかないほどメタナイトからのスキンシップは珍しく、僕は嬉しかった。

    でも、これも今日で最後なのかと思うと悲しくなる。

「うん。ここは居心地も良くて、他の星には無い色々な体験もできたし楽しかったよ。だけど、僕はやっぱり旅人だから。」

    同じ場所に居続けるのも悪くは無い。ただ、旅人として宇宙の星を転々とする日々も忘れられない。

    違う星の人に出会い、知らない場所を訪れることによってまた違う感じ方が出来る。

「私は君が居なくなってしまうことが未だに信じられないんだ。カービィ、どうしても行ってしまうのか。」

「うん。でも大丈夫だよ、メタナイト。戻ってこようと思えばいつでも戻ってこられるもん。」

「では、カービィは寂しくないのか。」

    寂しくないわけが無い。この星の住民達、デデデにワドルディ、そしてメタナイト。たくさんの人達と出会って本当に充実した日々だった。

「寂しいよ。でも、もう決めたから。」

「そうか…」

    メタナイトはいつも仮面を付けていて表情がよく分からない。その代わり、雰囲気でなんとなく感じることが出来る。

    今、もしかして…

「泣いてる?」

「…うるさい。仕方ないだろ。」

    やっぱりそうだった。メタナイトってば、こんな時まで強がっちゃって。必死に隠そうとしている。

「別に泣くことは恥ずかしい事じゃないと思うよ。今は泣いていい時だよ。」

    泣くことが恥ずかしいなんてそれは間違っている。勿論、泣いては行けない時も有るけれど、今回は泣いていいと思う。

「お前は何故そんなに強いんだ。こんな時でも泣かないのか。」

「他の人が泣いてると自分は泣きにくくなっちゃうからね。」

「ぐっ…」

    別にメタナイトを責めたい訳では無いけれど、これではまるで僕が薄情みたいじゃないか。僕はもっと感情豊かだもの。

「カービィ…」

    突然しんみりとした様子でで僕に話しかけてくる。

「ん?どうしたの。」

    メタナイトは小さな声ではっきりと言った。

「キスして欲しい。」

    それを聞いた瞬間、メタナイトの仮面を外す。そして、僕の唇はメタナイトの唇と重なっていた。泣いていたせいか少し塩辛い、触れ合うだけの口付け。それでも、僕達にとっては至福のひとときだった。

    メタナイトは名残惜しそうに唇を離す。こんな風に触れ合うのもきっと最後なんだろう。メタナイトには会えるよなんて言ったけど、きっと会うことは無い。メタナイトもきっと分かっているのだろう。

「もう少しこのまま手を繋いでいてもいいか。」

「うん。いいよ。」

    メタナイトが僕の手を離さまいと強く握りしめてくれる。僕もそれに応える。

    暖かい。ずっとこのままでいたいと思ってしまうほど僕はこの星のこと、メタナイトのことが好きになってしまったのだと感じた。

    こんな思いでこの先やっていけるのだろうか。分からない。けど、やると決めたことはやる。それが僕だ。

    でも、今は、今だけはこのままでいたい。

___________________________________________________________________________________________________________________________________カビメタの捏造です。カービィはやはり旅人だからきっといつかは遠くへ行ってしまうと思っています。

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